クワガタのいた林を想ふ
「クワガタとかカブトムシってどこに行けばいるの?」
「デパート!」
かつてテレビレポーターが都会の子供にインタビューした際の会話です。
そしてこれを聞いて私は、クワガタを買うだなんてなに馬鹿なこと言ってるんだと思いました。
「クワガタは買うもんじゃなくて自分で捕まえるもんに決まってるじゃないか!」と。
でも実際、私の妹の勤めていたデパートでは毎年夏になると、ノッコー(ノコギリクワガタ)やカブトムシ(国産)がじゃんじゃん売れるそうです。
そりゃヘラクレスとかネプチューンとか、図鑑の中でしか見られなかったやつが売れるのはまだわかります。でもノッコーやカブトムシなんてほとんどカナブンと同じ価値しかなかったんですね、私の中では。私がほとんどヒラタしか狙っていなかったのもありますが・・・
「なんで林の中に入っていってスズメバチにびびりながら捕まえようとしないんだ!」
「ムッとするような独特の湿度、空気、匂いの中、黒い背中を見つけた感動。これがいいんじゃないか!」
そんな風に思った私はクワガタたちが動き始める梅雨ごろいつもの林に行ってきました。チャリンコで5,6分の場所に最初の林(林①)があります。
「途方にくれる」
まさにこれでした。なんにも言葉が出てきませんでした。だってそこにあるはずの林が無くなっていたんですもの。しかも林①から見える場所にある林②までなくなっている・・・
大切な宝物を奪い取られた気分がしました。しかもそれはもう自分の元には一生戻ってこない。
しばらくチャリンコに乗ったままボーっとしていましたが、悲しんでばかりもいられません。まだいくつか場所はあります。
小さな林まで含めると全部で8箇所ほどあるのでそちらへ行くことにしました。
「悪夢」
普段より重いペダルをエッチラオッチラこいで林③に向かいます。さてと・・・ん?
「ふんぎゃぁぁーーー」
無い、無い、どこにもなーい・・・
林③も消えていました。そしてなんということでしょう、そこから続く林⑦までが見事に全部潰されていたのです。
これを悪夢といわずして何と呼ぶでしょう。エルム街のフレディも真っ青です
正直ここまでなくなっているとは本当に参りましたね。しかし、まだ最後の砦、林⑧が残っています。
林⑧は通称「馬糞の森」と呼ばれ、その面積もかなり大きいためここだけは大丈夫だと思っていたんですね。またヒラタの実績も高いのでいつも一番最後のメインディッシュにとっていたんです。
「最後の砦は?」
まぁポイントはほとんど無くなっちゃったけど馬糞の森があればいいか、とショックのあまり半分抜け殻のようになりながらも最後の砦に向かいました。
「エッチラオッチラ、さてと、ん?おかしいな、道間違えたかな?」(何百回も通った道を間違えるわけが無い)
結局そのへんの道をウロウロ回りながら元の場所に戻ってきました。
「・・・ヒ、ヒ、ヒデブぅー・・・・」
(こんな風に書いてますが、本当は茫然自失でしたよ)
半分抜け殻だったのが完全に抜け殻になった瞬間でした。クワガタやカブトムシがものすごく遠い存在になってしまったような気がしましたね。都会の子供たちのように。
そして彼らの気持ちも少しは分かったような気がしました。デパートに行かなきゃ虫たちに会えないんだ、と。
「じゃぁクワガタは買うもの?」
でも私はおそらくクワガタを買う目的でお店に行くことは無いでしょうね。
「あくまでクワガタは木や土の匂い、森そのものを感じながら自分の手で捕まえるものだ」
この考えはきっといつまでも変わらないでしょうから。どうしても虫を買うことに抵抗を感じる石頭です。
なので、いまだにオオクワガタは野生を捕まえたいなぁなんて思ってるんですよね。もはや相当遠い夢になりつつありますけど。
いなかったのかなぁ・・・どうしても近所の林で捕まえたくてかなり一生懸命探したんですけどね。。。
今となっては、特別な飼育施設のない私に見つからなくてよかったのかな、なんて思ったりもしてます。でももし今後オオクワガタが自分の前にひょっこり現れたら環境を整えて飼ってしまいそうですね。(私、捕まえたヒラタはお盆になると林に帰すんです)
技術の向上などによってクワガタが絶滅することはなさそうですが、やっぱり野生にこだわる私としては各地で雑木林がどんどん消滅していくのは非常に悲しいです。また、外国産の虫を野に放つことにも反対します。
人間を守るか生き物たちを守るか・・・
この先もずっと生き物たちが暮らしていける日本であってほしいと願わずにはいられません。