釣り場のトイレ
あれはある暑い夏の日のこと、ハゼでも釣ろうかということでいつもの河口に来ていました。
平日ということもあってか周りに釣り人はほとんどいない状況で、こりゃのんびりできていいわぃなどと思いながら竿を出していました。
ハゼのほうも退屈しない程度に釣れてきます。照りつける太陽の下、有意義なひと時を楽しんでいたところ突然やつは襲ってきました。
私はトイレがかなり遠い方で釣りをしている最中はほとんど催すことすらないのですが、この時はどういう訳か来てしまったのです。もちろん大の方が。
朝してきたかどうか記憶をたどる私。しかしそんなことはもはやどうでもよく、 また、「そのうち治まるだろう。いや、治まってくれ」なんて思ってましたが願いとは裏腹に一向にそうなる気配はありません。
さて、困りましたね。この釣り場は近くにコンビニや釣具店がないんです。
民家はあるんですが、突然
「すみません。あのぉ、、トイレ貸してもらえませんか?」なんて言うのもアレですしねぇ。
そうこう考えているうちにもやつはどんどん迫ってきています。ついにはアヌスをコンコンとノックし始めました。暑さとは関係のない変な汗がじっとりと出てくるのを感じます。
「あぁ、もう仕方ない。橋げたの陰でさせてもらうか・・・」
「うおぉ、、紙がないではないか・・・」
起死回生の妙案
いっそう激しくなったノックがタイムリミットを告げる中、窮地に立たされた私はある妙案を思いついたのでした。
そそくさとジーパンを脱ぎ捨てトランクス一丁になり水の中に入っていったのです。もし見ている人がいたならこう思ってくれることを希望しつつ。
「よっぽど暑いんだろうな。兄チャン水浴び始めたよ」
いよいよ余裕のなくなった私はもう一心不乱に川の中を歩いていきました。幸いなことに、少し進むと胸の下辺りの深さに到達することができましたのでおもむろに川上のほうを向き、川下に向かってちょっとお尻をつきだしました。
そしてなんとか無事に「開門」することに成功したのです。
火照った体に冷たい水はとても心地よく、何より恐ろしい呪縛から解放されたかのような感覚といったらありませんでした。
爽快と言い換えることすらできたでしょう。
しばらく水浴びを楽しんだ後、何食わぬ顔で私は水から上がり、その夏の強い日差しで濡れたトランクスを乾かすのでした。
そしてすぐそばを通りかかった地元の老人とひと言あいさつを交わしました。
「いやー、今日も本当に暑いですね~」